この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
父親の公正証書遺言により、財産は全て弟である相談者に相続させることになっていました。そのため、相談者は、父親の遺言に従い、相続財産を受領していました。ところが、父親の全財産を弟の相談者一人が相続するのは、兄の遺留分(法定相続人に最低限保障される遺産のことです。)の侵害であるとして、兄から遺留分減殺請求権(現在は遺留分侵害額請求権といいます。)を行使されることになりました。そこで、相談者は、高額の兄の請求に苦慮して来所されました。
解決への流れ
相手方の兄は弁護士をたて、裁判にまで至ることになりました。訴え当初は、兄の遺留分を侵害しているとして、約1200万円もの高額な金員の請求に加えて、父親の財産である土地・建物の所有権移転手続きも迫られていましたが、最終的には、400万円の金員の支払いと土地のみの返還で和解が成立しました。
一般的に、相続人が遺した遺言があると、そしてそれが公正証書遺言であったりすると、ついその通りに財産を相続するものだと考えてしまいがちです。本件のように、全ての財産を一人の相続人に相続させたい、という被相続人の遺志は尊重されるべきですが、被相続人の財産の形成には何がしかのカタチで相続人たちは寄与しているものです。そして、遺留分制度は、そのような献身的な相続人(の生活)を保障する制度という側面を持ちます。ですから、遺言に全ての財産を一人の相続人に相続させるとの記載があったとしても、必ずしも全ての財産を一人の相続人が相続できるわけではありません。遺言の内容に不安がある場合には、遺言書などを発見した時点で早いうちに、弁護士に相談してみることをお勧めいたします。弊所には相続分野を得意とする弁護士が揃っていますので、よろしければ相続・遺産分割でお悩みの方はお気軽にご相談ください。