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働き方改革の残業規制で「名ばかり管理職」増加の懸念も…労働時間の証拠集めが大事
2017年03月26日 09時59分

「働き方改革」の焦点だった残業時間の上限規制について、政府・経団連・連合は、残業は年間720時間、繁忙期でも月100時間未満とすることで合意した。合意案については、年間上限に休日労働が含まれていないことが不安視されているが、そのほかにも規制逃れのため「名ばかり管理職」が増えるのではないかと危惧する声があがっている。

管理職(管理監督者)には、残業時間の上限は適用されず、残業代も支払わなくて良いことになっている。そこで、本来は残業に限りがある平社員に適当な肩書きだけを与えて、長時間働かせようとする企業が増えるのではないかというわけだ。

もちろん法律上、実質を伴わない「名ばかり」の扱いは違法だが、もし自分が名ばかり管理職にされてしまったら、会社とどのように争っていけば良いのだろうか。白川秀之弁護士に聞いた。

「働き方改革」の焦点だった残業時間の上限規制について、政府・経団連・連合は、残業は年間720時間、繁忙期でも月100時間未満とすることで合意した。合意案については、年間上限に休日労働が含まれていないことが不安視されているが、そのほかにも規制逃れのため「名ばかり管理職」が増えるのではないかと危惧する声があがっている。

管理職(管理監督者)には、残業時間の上限は適用されず、残業代も支払わなくて良いことになっている。そこで、本来は残業に限りがある平社員に適当な肩書きだけを与えて、長時間働かせようとする企業が増えるのではないかというわけだ。

もちろん法律上、実質を伴わない「名ばかり」の扱いは違法だが、もし自分が名ばかり管理職にされてしまったら、会社とどのように争っていけば良いのだろうか。白川秀之弁護士に聞いた。

●タイムカードやメールなどで労働時間の証明準備を

――「名ばかり」かどうかは、どこで判断する?

「名ばかり管理職」は、労働基準法でいう管理監督者には該当しません。タイムカードやメールなどで労働時間を証明し、会社に対して残業代(時間外労働手当、休日労働手当など)を請求することが出来ます。

管理監督者かどうかは、役職名ではなく、労働実態で判断をします。管理監督者と言えるためには、経営者と一体的な立場で仕事をしている、出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない、その地位にふさわしい待遇がなされていることが必要です。

たとえば、(1)出退勤の日時に裁量があること、(2)人事権を持ち、人を雇って自らの労働量を調整できるような立場にあること、(3)残業代が支払われないことに見合う給与待遇を受けていること、などです。

ただ、管理職とされる方の多くが、管理監督者に該当していないのが実態でしょう。人事権があるといっても、アルバイト採用程度では管理監督者と言えないとした裁判例があります(日本マクドナルド事件、H20.1.28)。

――名ばかり管理職を命じられたら、どうすべき?

法的には、命令を拒否して、争うことも可能ですが、現実的に個人で争うのは大変です。(1)労働組合に加入をして団体交渉する、(2)労働時間の資料を準備しておいて退職後に請求するといった方法が現実的だと思います。

――会社に対する制裁はないの?

そのような違法な対応をする会社は、払うべき残業代を支払っていなかったり、違法な長時間残業をさせていたりするので、労働基準法に違反します。違反には「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられます。

これまで、この法律に違反して刑事罰を受けた件は少なかったのですが、長時間労働に対する社会の目が厳しくなってします。最近ではドンキホーテやABCマートが、違法な長時間労働で書類送検されました。今後は立件されることも多くあると思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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