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「イケメンで性犯罪防止」福岡県警のキャンペーンが波紋、なぜこうなったのか?
2020年02月04日 09時46分

博多駅前で1月21日に福岡県警などが開いた「性犯罪防止キャンペーン」。性犯罪の被害にあわないように「防犯ブザーを持ち歩く」といった呼びかけに対し、ネットで「抑止にならない」、「加害者側の意識改革を」と指摘が相次いだ。

このキャンペーンを報じた九州朝日放送(1月21日)は、「イケメンで訴求 性犯罪防止」と題し、一日広報大使となった男性を「若い女性に訴えるためイケメン広報大使が登場」と紹介している。

福岡県警の担当者は今回のイベントについて、「イケメンと性犯罪をくっつける意図はありませんし、防犯アプリの普及のための手段の一つ」と説明。「男女を問わずアプリを入れてもらい、犯罪状況に目を向けてほしいという思いでした」と話した。

女性や子どもが防犯対策することで、減らせる性犯罪被害も少なからずあるだろう。一方で、防犯意識を高める啓発だけでいいのだろうか。

博多駅前で1月21日に福岡県警などが開いた「性犯罪防止キャンペーン」。性犯罪の被害にあわないように「防犯ブザーを持ち歩く」といった呼びかけに対し、ネットで「抑止にならない」、「加害者側の意識改革を」と指摘が相次いだ。

このキャンペーンを報じた九州朝日放送(1月21日)は、「イケメンで訴求 性犯罪防止」と題し、一日広報大使となった男性を「若い女性に訴えるためイケメン広報大使が登場」と紹介している。

福岡県警の担当者は今回のイベントについて、「イケメンと性犯罪をくっつける意図はありませんし、防犯アプリの普及のための手段の一つ」と説明。「男女を問わずアプリを入れてもらい、犯罪状況に目を向けてほしいという思いでした」と話した。

女性や子どもが防犯対策することで、減らせる性犯罪被害も少なからずあるだろう。一方で、防犯意識を高める啓発だけでいいのだろうか。

●現在の啓発は?

福岡県は、強制性交等罪、強制わいせつ罪の認知件数(人口10万人当たり)が、2018年まで9年連続全国ワースト2位(2019年はワースト5位)。県警は「性犯罪の抑止」を三大重点目標にすえ、啓発に取り組んでいる。

今回おこなわれた「性犯罪防止キャンペーン」では、女性や子どもの防犯対策に焦点があてられた。福岡県警生活安全総務課によると、キャンペーンは、防犯アプリ「みまもっち」と県内主要駅での防犯ブザー貸し出しの普及を目的としたものだった。

福岡県警の防犯アプリ「みまもっち」に関するポスター(福岡県警HPより) 福岡県警の防犯アプリ「みまもっち」に関するポスター(福岡県警HPより)

「みまもっち」は、近くの犯罪情報を知らせ、防犯ブザーや110番通報機能などがついているアプリだ。

県警が2019年8月に実施した利用者アンケートでは、アプリを利用したことで回答者の75%が「事件が身近な場所で発生していることを知った」と答え、アプリにより「通知があると防犯を意識するようになった」、「明るい道を通るなど考えて行動している」と行動の変化を回答している(いずれも複数回答)。

2018年中に福岡県でおきた強制性交等罪、強制わいせつ罪の認知件数(警察に被害の届出がされた件数)は381件。場所は、屋外(道路上、公園、駐車場)での発生が37%ともっとも多く、ホテルや飲食店などその他が36%、住宅が26%と続く。時間帯は、21時〜2時の夜間の被害が全体の45%だ。

福岡県警の防犯アプリ「みまもっち」に関するポスター(福岡県警HPより) 福岡県警の防犯アプリ「みまもっち」に関するポスター(福岡県警HPより)

県警HPで公開されている性犯罪抑止対策チラシでは、「自分は大丈夫と思っていませんか?」と呼びかけ、帰宅する際は「一人で歩くときは警戒モードに」、「明るくて人通りの多い道を歩く」、自宅では「一人暮らしを連想させない」、「玄関ドアを開ける瞬間が危ない」と具体的にポイントをあげている。

生活安全総務課の担当者によると、近年の動向は、見知らぬ相手からの通り魔的犯行が強制性交等罪で約1割、強制わいせつ罪で6割超だという。県警が「性犯罪」というとき、強制性交等罪、強制わいせつ罪に該当する被害を指しているが、これらの啓発は強制わいせつ罪に該当する被害を意識したものと言えるだろう。

●被害申告をためらわせる原因になっていないか?

識者はこうした啓発に欠けた視点があると指摘する。

龍谷大学犯罪学研究センターの牧野雅子さんは「加害を抑止するためにどんな活動が行われているかの情報がまったくないまま、被害者にのみ対策をとるよう啓発するのは、性暴力は被害者が自衛しさえすれば防げる、女の問題であるという意識を社会に植えつけることです」と疑問をていする。

「性暴力の多くは、顔見知り同士の間で起こります。しかし、今回の性犯罪抑止キャンペーンは、人通りの少ない夜道で見知らぬ人から被害に遭うといったケースが想定されていて、性暴力被害の実態が反映されていません」

性暴力被害は暗数が多く、警察に届出する数は、実際の被害件数の1割程度ともいわれている。

牧野さんは「被害の実態と認知件数がかけ離れていて、有効な対策や被害者支援ができるのか。認知件数の減少は、届出のしにくさを示していると読むべきではないか」と指摘し、認知件数を増やし、被害の可視化を目指すことも考えられると話す。

「自衛を強要するような啓発活動は、既に被害に遭っている人たちの落ち度を責める、二次加害となりえ、被害申告をためらわせる原因にもなります」

●福岡県警「キャンペーンの趣旨が伝わらず、誤解を招いているところもある」

福岡県警は、加害を抑止するためにどのような広報啓発活動をしているのか。

生活安全総務課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に、(1)学校現場での指導、(2)性犯罪防止教育用のDVDつきテキスト作成、(3)「同意のない性行為は犯罪」という広報啓発動画、(4)「痴漢・盗撮は犯罪」という啓発ポスター、など主に4つの取り組みをおこなっていると回答した。

1月29日には、県警HPの「性犯罪の根絶」のページ上部に「性犯罪は絶対に許さない!悪いのは犯人!だけど、防犯意識は持っておこう!」との言葉が赤枠で囲まれ新たに表示されるようになった。

以前から同様の文言を掲載していたというが、今回の県警キャンペーンに関して「被害者ばかりに責任を負わせるのか」といった意見が寄せられ、「キャンペーンの趣旨が伝わらず、誤解を招いているところもある」と改めて強調したという。

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