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妻が「不倫相手の子」を妊娠してしまった! 法律上は「夫の子」になるって本当?
2013年09月05日 19時10分

タレントの矢口真里さんは自らの不倫をきっかけに離婚したが、最近は同じように、女性の浮気が原因で離婚に至る夫婦が増えているという。その場合、離婚時に不倫相手の子を身ごもっていることもある。

あるネットの相談サイトでは、「夫と離婚したときに、彼の子どもを妊娠していた」という女性が投稿していた。離婚した時点で妊娠2か月。半年後に相手男性と再婚する予定なのだという。

問題は、おなかの中にいる子どもは法律上、誰の子ということになるのか、ということだ。もし元夫の子ということになってしまった場合、「本当の父親」の戸籍に入れるには、どうしたらいいのだろうか。離婚問題にくわしい中里妃沙子弁護士に聞いた。

●結婚期間中に妊娠した子どもは「夫の子」と推定される

「民法772条1項では、『妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する』としています」

このように中里弁護士は、民法の推定規定をあげる。つまり、妻が不倫して身ごもった子どもも、結婚している間に妊娠した場合、法律上は「夫の子」と推定されてしまうというわけだ。

「問題の子どもは、元夫との婚姻中に妊娠したということですから、法律上は、元夫の子と推定されてしまいます」

しかし本当の父親は、元の夫ではなく、不倫相手なのだ。法律上の親子関係と矛盾が生じることになる。どうやって解消すればいいのだろうか。

「この場合、子どもを『本当の父親』の戸籍に入れるためには、2つの方法があります」

このように述べたうえで、中里弁護士は次のように説明する。

●元夫に「嫡出否認の訴え」を起こしてもらう

「まず元夫が、民法774条の『嫡出否認の訴え』を提起することです。この訴えは、元夫のみが、親権を行う母親または子(未成年の場合には特別代理人)に対して行うことができます。しかも、子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりません」

つまり、元夫が「元妻が生んだのは自分の子どもではない」と否認する裁判を起こす必要があるということだ。

「本当の父親は、子供が裁判の結果、元夫の嫡出子ではないとされた後に、認知することができます。そして、子どもは、認知のときから、本当の父親の嫡出子となります」

この方法は、元夫に裁判を起こしてもらう必要があるというが、ネックといえばネックだ。そこで、別の方法があるという。

●親子関係が存在しないことを確認する「調停」を申し立てる

「もう一つの方法は、子(未成年の場合には特別代理人)や母、父、親子関係について直接身分上利害関係を有する第三者が、元夫に対して『親子関係不存在確認調停』を申し立てることです」

これは、元夫が裁判を起こさなくてもできる方法だ。

「この調停において、当事者双方の間で『その子どもが元夫の子ではない』という合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます」

あとは、『嫡出否認の訴え』のときと同じように、「本当の父親は、審判の後、認知することができ、子どもは、認知のときから、本当の父親の嫡出子となります」ということだ。

このように妻が不倫をして、まだ結婚している間に妊娠してしまった場合は、裁判や調停・審判などの手続を経ないと、「本当の父親」の子とすることができないのだ。手続が面倒くさいかもしれないが、法律婚がベースになっている以上、仕方がないことなのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

タレントの矢口真里さんは自らの不倫をきっかけに離婚したが、最近は同じように、女性の浮気が原因で離婚に至る夫婦が増えているという。その場合、離婚時に不倫相手の子を身ごもっていることもある。

あるネットの相談サイトでは、「夫と離婚したときに、彼の子どもを妊娠していた」という女性が投稿していた。離婚した時点で妊娠2か月。半年後に相手男性と再婚する予定なのだという。

問題は、おなかの中にいる子どもは法律上、誰の子ということになるのか、ということだ。もし元夫の子ということになってしまった場合、「本当の父親」の戸籍に入れるには、どうしたらいいのだろうか。離婚問題にくわしい中里妃沙子弁護士に聞いた。

●結婚期間中に妊娠した子どもは「夫の子」と推定される

「民法772条1項では、『妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する』としています」

このように中里弁護士は、民法の推定規定をあげる。つまり、妻が不倫して身ごもった子どもも、結婚している間に妊娠した場合、法律上は「夫の子」と推定されてしまうというわけだ。

「問題の子どもは、元夫との婚姻中に妊娠したということですから、法律上は、元夫の子と推定されてしまいます」

しかし本当の父親は、元の夫ではなく、不倫相手なのだ。法律上の親子関係と矛盾が生じることになる。どうやって解消すればいいのだろうか。

「この場合、子どもを『本当の父親』の戸籍に入れるためには、2つの方法があります」

このように述べたうえで、中里弁護士は次のように説明する。

●元夫に「嫡出否認の訴え」を起こしてもらう

「まず元夫が、民法774条の『嫡出否認の訴え』を提起することです。この訴えは、元夫のみが、親権を行う母親または子(未成年の場合には特別代理人)に対して行うことができます。しかも、子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりません」

つまり、元夫が「元妻が生んだのは自分の子どもではない」と否認する裁判を起こす必要があるということだ。

「本当の父親は、子供が裁判の結果、元夫の嫡出子ではないとされた後に、認知することができます。そして、子どもは、認知のときから、本当の父親の嫡出子となります」

この方法は、元夫に裁判を起こしてもらう必要があるというが、ネックといえばネックだ。そこで、別の方法があるという。

●親子関係が存在しないことを確認する「調停」を申し立てる

「もう一つの方法は、子(未成年の場合には特別代理人)や母、父、親子関係について直接身分上利害関係を有する第三者が、元夫に対して『親子関係不存在確認調停』を申し立てることです」

これは、元夫が裁判を起こさなくてもできる方法だ。

「この調停において、当事者双方の間で『その子どもが元夫の子ではない』という合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます」

あとは、『嫡出否認の訴え』のときと同じように、「本当の父親は、審判の後、認知することができ、子どもは、認知のときから、本当の父親の嫡出子となります」ということだ。

このように妻が不倫をして、まだ結婚している間に妊娠してしまった場合は、裁判や調停・審判などの手続を経ないと、「本当の父親」の子とすることができないのだ。手続が面倒くさいかもしれないが、法律婚がベースになっている以上、仕方がないことなのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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